観光バス運転士とは、定期観光バスや、修学旅行やツアーなど団体旅行のための貸切観光バスを運転する職業です。
名所旧跡や観光施設を巡る定期観光バスや、修学旅行やツアーなどの団体旅行で使用する貸切観光バスを運転する。
貸切観光バスの場合は、通常、乗車予定の3日ほど前に担当業務が決定するので、運行予定に基づいて道路の渋滞状況などの情報を集めて出発に備える。当日は、所属する営業所に出勤し、その日の運行予定路線と乗務する車両の確認をする。エンジンオイルや燃料の油量の確認、ブレーキの利き具合のチェック、ドアの開閉装置の点検等を行う。運行管理者からの点呼(連絡・指示の伝達)時には、健康管理面の確認や、検知器によるアルコールチェックを受ける。特に、経由地、発着時刻、宿泊場所などについて、バスガイドが同乗する場合はバスガイドとともに、運行管理者から詳しい指示を受ける。
集合した客をバスに乗せ、添乗員やバスガイド、また、複数台で運行する場合は同僚の運転士と打ち合わせて目的地に向かう。走行中は常に安全運転を心がけ、車内安全面とともに車内の雰囲気にも気を配って楽しい旅行を演出することも必要となる。カーナビゲーション機能の装備等の運転支援機器類の整備によって、以前よりも運転負担が軽減されている。交通渋滞などにより、必ずしも予定の走行ができない場合もあるが、概ね指示されたスケジュール通りに観光地、食事や休憩場所を回れるように発着時刻に留意して運転する。予定のコースを終えて乗客を降ろしたら、営業所に戻って、作業日報に走行距離などを記入する。運行記録に関しては、デジタルタコグラフにより運行管理者がリアルタイムに把握するバス事業者もみられ、エコ運転等の運転スキル向上に有効活用されたり、運転士の日報作成の事務負担が軽減されているケースもある。
◇よく使う道具、機材、情報技術等
バス車輌及び付属機器(デジタルタコグラフ、ドライブレコーダー、運行関連の連絡・記録用機器)、アルコール検知器
学歴は不問だが、就業には大型自動車第二種免許が必要となる。同免許の受験資格は所定の免許を取得し、その運転経験が通算3年以上であることなどが条件である。そのため、これまではトラックドライバー、タクシー運転手などからの転職者が多かった。昨今の運転士不足の状況の中で、大型自動車第二種免許の取得を積極的に支援する企業が増えており、そうした場合、採用時には免許を持っていなくても、入社後に免許を取得するという条件で採用される。また、採用手段として求人エージェントの積極活用や、複数のバス事業者による合同面接会の開催等の取組みがみられる。このような動きもあり、前述のように必ずしも運転を職業とする者による転職だけでなく、他業種や業界未経験者からの入職が増えている。さらに、制度改正により、一定時間の特例教習を修了することで19歳から大型免許を取得できるようになっており、若年層が入職しやすい環境が整えられている。
採用に当たっては、運転技能だけでなく、注意力や目と手足の正確で敏速な共応といった適性が重視される。また、安全意識の高さや交通法規等の遵法意識はもちろんのこと、接客業務として、適切なコミュニケーション力や丁寧な態度が求められる。乗務に当たっては、道路渋滞等さまざまなイレギュラーな状況に即応できる柔軟性や耐性が必要となる。
採用されると1〜2カ月の就業前訓練を受け、乗客に対する接遇、運転の実地訓練、周辺の地理などについて学習する。訓練修了時に行われる各営業所での実地試験に合格した後、業務に就く。経験を積むにつれて、宿泊を伴うコースや高速道路を長時間走るコースも担当する。また、勤務する企業によっては、路線(乗合)バスの運転士を経て観光バス運転士になる場合や、路線(乗合)バスと観光バスの双方に乗務する場合がある。定年年齢まで運転士の仕事を続ける者が多いが、運行管理や事務に異動し営業所の所長になる人もいる。事務職や管理職となる場合、社内試験制度があるケースもある。
観光バスを運行するバス会社、鉄道会社の子会社などに勤務する。就業者は男性が多いが、業界団体の調査結果によると、女性の割合は1.7%(2021年時点)となっており、少しずつではあるが増えている。通常は月給制であり、諸手当などの占める割合が高い。近年は運賃改定を原資とした給与水準の改善が進んでいる。
勤務時間や勤務形態は、運転するコースによって異なる。勤務時間は平均すると1日8時間程度である。乗務時間については、例えば、空港とホテルの間のように近距離の乗務のものから、周遊観光など宿泊を伴う乗務のものまで、会社がどのような顧客向けのサービスを行うかによって幅がある。
長時間、長距離の運転になる場合、交代運転手の配置が義務付けられており、安全への配慮がなされている。コースによっては早朝勤務や深夜勤務、宿泊もある。また、貸切バス全体でみると、平日は遠足や修学旅行、企業研修などのニーズがあり、土日祝日には日帰り観光ツアーや宿泊を伴う周遊観光のニーズがある。乗務のシフトによっては土日祝日にも勤務が生じる場合がある。年間を通じてみると、観光シーズンなど予想できる繁忙期と、そうでない閑散期のメリハリがあるため、計画的にまとまった休暇を取得しやすい。
労働基準法や改善基準告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)の改正により、令和6年4月から時間外労働の上限規制が適用されるとともに、拘束時間等の基準が改められ、運転士の長時間労働の改善や、体力面での負担軽減の環境が整えられている。
外国人旅行者にも個人旅行が広がり観光バスの需要があることから、業界団体が多言語での案内、Wi-Fiの整備等に取り組んでいる。
また、運転士の人材確保に向けて、業界・事業者を挙げての取組みがみられる。例えば、女性が働きやすいよう、子育てと両立しやすいシフトの設定や、休憩室やトイレの整備をすること、また、若者の新規入職を意識し免許取得の支援等、社内の環境整備に積極的な企業が増えているのはその一端である。また、今後は外国人の採用も選択肢の一つとなっていくことが見込まれる。
その他、業界団体として、カスタマーハラスメント防止の周知啓発など、運転士の働く環境改善に積極的に取り組んでいる。このようにして運転士の労働時間や拘束時間の労働条件向上、待遇改善、さまざまな工夫による日常業務の負担軽減策が図られており、人材確保や、よりよい働き方にむけた取組みが着実に進んでいる。
業界をまたいで、AI 影響度が同水準の代表職業(規模順)。