風力発電の企画・調査とは、風力発電に適した場所の選定、そこでの風力発電の企画・計画の検討、周辺環境への影響の調査、建設に必要な許認可の取得、地域との調整を行う職業です。
風力発電に適した土地の選定、そこでの風力発電の企画・計画の検討、周辺環境への影響の調査、建設に必要な許認可の取得、地域との調整などを行う。また、建設、運転まで含めた風力発電プロジェクト全体の管理や関係者との折衝も行う。
まず、風力発電に適した場所を選定するため、風速や風向のデータを収集する。既存のデータも活用し、風況観測機器やドローンを使って情報収集する。地形や周辺の環境(住宅、施設、自然環境など)も調査する。風車設置に適した土地がみつかれば、自治体に風車建設の企画・計画を提案し、地域住民への初期調査開始の説明会を行う。
環境影響評価(EIA : Environmental Impact Assessment)として、事業が生活環境、自然環境に与える影響を調査、予測、評価する。この中で地元住民や自治体との協議も行う。必要であれば環境保全措置も考える。
発電量の予測、設備投資の金額、運用経費などを試算し、収益性や投資が回収できるかを判断する。技術的な検討も行い、風車を選定する(モデルや大きさ)。必要な土地や道路の造成、送電インフラの整備計画も作成する。
風車稼働には初期調査から10年近くかかることが多く、その間に調査や折衝、また、計画や申請のために関係する法律を読み解くという様々な仕事があるが、金額の大きなプロジェクトを進めている、というやりがいもある。地元説明会が終わった、自治体への申請が終わった、風車建設の工事が始まったというような節目節目での達成感があり、出来上がった風車を見上げると大きな充実感がある。
周辺地域を検討するときにGIS(地理情報システム)や国土地理院の国土数値情報を用いる。企画書、計画書作成にはパソコンを用い、文書表現等で生成AIを活用することもある。スマートフォンは必需品であり、圏外にならないような機種を選ぶ。コラボレーション・ツール(マイクロソフトのTeams他)により社内外の関係者との情報共有、スケジュール管理、プロジェクト管理、ビデオ会議等を行う。
ここまで陸上風力発電を想定して解説してきたが、洋上風力発電についても注目が集まっている。陸上風力発電は適した土地、設置できる土地が限られているが、洋上風力発電はこれから大きな可能性がある。洋上風力発電は現在、国が設置海域候補地を選定し、そこでの事業を募集する形で本格的な事業化が始まっている。
洋上風力発電では地元漁業者の理解と調整が必要であるが、今のところ漁業に悪影響は見られず、漁獲量の変化に対する懸念は薄らいでいる。海上に広がる巨大な風車群は観光資源とまでは言えないが、目立つ設備として、その地のランドマークともなる。
洋上風力発電の中でも浮体式風力発電は着床式に比べ、深い海底の場所にも設置でき、遠浅の海岸が少ない日本において有力な選択肢として期待されている。
<就業希望者へのメッセージ>
入社するまではそもそも風力が日本にとって重要な電源であることさえ知りませんでした。多くの関係者が一丸となって取り組んでいること、地域住民や官公庁に喜ばれる仕事に携われていることにやりがいを感じています。(就業者 30代)
1つのプロジェクトが数年単位なので、事業地の方々との出会いがあり、その土地への愛着がわきます。発電所の建設にとどまらず、電気をどう消費するかを含めたプロジェクトに携わることができ、色々なことが学べます。(就業者 30代)
プロジェクトマネジャーとして自分自身で考えながら、規模の大きい再エネプロジェクトを推進できる難しさと楽しさを感じます。自身の社会人スキルとして、折衝能力、ファイナンス知識・法知識など多方面のスキルを習得できることも大きな魅力です。(就業者 30代)
◇よく使う道具、機材、情報技術等
パソコン、文書作成ソフト(Word等)、プレゼン資料作成ソフト(PowerPoint、Keynote等)、GIS(地理情報システム)、国土地理院の国土数値情報、コラボレーション・ツール(情報共有、文書管理、スケジュール管理、ビデオ会議、チャット等)、ヘルメット等(建設現場に行くとき)、スマートフォン
風力発電は比較的新しい業界であり、新卒で採用され、社内で育成されるという人はまだ少ない。建築関係のデベロッパーをしていたり、金融機関で再エネ関係の投資をしていたり、また、工場プラントの営業をしていたりと、様々な仕事をしていた人がキャリア採用され仕事に就くことが多い。
社会人経験のある中途採用のため、短期間の社員研修を受け、社内の教材を自分で学び、社内システムの操作方法等を身につけ、それぞれのプロジェクトに配属される。最初は風況の調査や環境アセスメントなど、プロジェクトの一部の仕事を任され、色々な力が身についてきたところで一つの風力発電のプロジェクト全体を任される。仕事と並行して、土地取得や自治体への申請など社内のワークショップに参加し、実践力を高めていく。難しい案件では複数でプロジェクトを担当することもあるが、一人で一つのプロジェクトが基本になっている。副担当として他の人が担当しているプロジェクト側面から支援したり、一つのプロジェクトに主担当と副担当を置いている会社もある。
大学で工学等を専攻し、新卒で建設会社の風力発電部門に採用される場合は、エンジニアとして風力発電の設計・建設を行い、その後、風力発電の企画・調査等、風力発電プロジェクト全体を担当することもある。現在、技術開発が盛んな洋上風力発電ではこのような人も多い。
風力発電の現場は都市部ではないため、運転免許は必須である。林道や舗装されていない道路を運転することが多い。土地の取得において宅建(宅地建物取引士)などの資格が役立つこともある。関連資格として経済産業者の国家資格であるエネルギー管理士があるが取得している人は少ない。その他の資格として、技術士(機械、建設、環境部門)、第二種電気主任技術者等があるが持っている人は多くはない。
再エネ特措法、電気事業法、環境影響評価法、建築基準法、森林法、農地法、景観条例、港湾法、再エネ海域利用法、等々、関係する法律は多く、それらのポイントを押さえておく必要もある。
地方自治体や地元住民等、多くの関係者の意見をまとめプロジェクトを進めていくため、コミュニケーション能力、調整力、誠実さが求められ、粘り強さ、忍耐力も必要とされる。一つ一つ、自分が中心になって進めていかなければならず、自発性、主体性が重要である。
勤務先は風力発電に取り組んでいる発電事業者、石油会社等エネルギー関連企業、建設会社が多い。就業場所は本社の事業開発部門であり大都市であるが、全国各地の建設現場に出張し、調査を行ったり、自治体と折衝したり、地元住民への説明会を行ったりする。週前半は本社、週末は各地建設現場という勤務もある。しばらく現地に留まり、現地事務所で仕事をする場合もある。
就業者は男性が多く、年齢層としては30歳代前半が多い。プロジェクトの担当者はほとんどが正社員であり、給与は月給制、多くが大企業であることから給与水準は高い。
風力発電は世界的な温室効果ガス削減、カーボンニュートラルの動きから期待されているが、設置の規制が厳しくなったり、資材が高騰したり、また、陸上の場合は適した土地が少なくなったりと、これからの事業が厳しい面もある。以前は国内の風車メーカーもあったが、現在は国内の風車メーカーはなく、これも事業開発を難しくしている。
洋上風力は本格的な取り組みが始まったところであり、特に浮体式風力発電は海底が深いところでも設置でき、様々な技術開発と伴って、これから発展していくと考えられ、建設、設計の技術開発により、今後は海外展開も期待される。
風力発電は風に左右されるが、発電した電力を蓄電池に蓄えたり、発電した電力で水素を作る等、関連する技術の開発、実用化も進んでいる。事業採算性も必要な要素ではあるが、持続可能な社会に貢献する再エネの一つの有力な選択肢として重要性は高い。
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